ホンダソルテックの太陽光発電

太陽光発電比較探検隊

ホンダソルテックの太陽光発電

技術屋魂のDNAで敢えて挑戦した新市場

 

巷では伝説のように語り継がれていますが、自動車メーカーの本田技研工業株式会社は、創業当時から「技術屋」としての誇りをもち、一貫して独自の技術を用いたバイク、自動車を世に送り出してきたメーカーです。そのホンダはいまや「世界のホンダ」となり世界各国にホンダファンをもつまでになりました。太陽光発電とは関係のないような話に聞こえるかも知れませんが、このソーラーパネルの開発においても、そうした技術屋としての開発魂は受け継がれています。「誰もやらないことをやろう」、「技術に妥協はするな」というのが、本田宗一郎の口癖であり、それがソーラーパネルの技術開発においても守られています。

 

株式会社ホンダノルディックは、本田技研工業株式会社の資本をもとに100%子会社として2006年12月にスタートしました。環境保全に早くから取り組んできた親会社の意向を引き継ぎ、これまで培ってきた四輪や二輪製造での技術を、太陽光発電の領域に広げようというのがこの会社の設立主旨です。しかしこのソーラーパネルの市場参入は、一歩も二歩も出遅れた感のある同社には圧倒的に不利な形勢でしたが、ホンダノルディックは、シリコンを原料とした太陽光発電が寡占状態の市場にある中、シリコン系では未知の領域といってもいい「化合物系」と呼ばれるソーラーパネルの製造に特化して開発をすすめ製品化にこぎつけました。

 

寡占化した液晶パネルではなく「CIGS」で切り開く

 

開発当初から業界内外で話題になり、「あのホンダさんなら驚くような製品を市場に送り出してくれるだろう」との呼び声も高かったのですが、甲子園球場の屋根の一部に採用され喝采を浴びたのを最後に、残念ながらソーラーパネルの事業からは2014年4月をもって撤退ということになりました。製造プロセスでの環境マネジメントにおいても、他社が真似できないほどのCO2排出量の削減効果を達成させたり、工場の消費エネルギーの低減量も半端なものではありませんでした。撤退の理由には、競争の激化による市場価格の下落と円安などによる為替差損があったとされています。

 

ホンダノルディックがめざしていた太陽光発電の化合物系とは、銅(Copper)、インジウム(Indium)、ガリウム(Gallium)、セレン(Selenium)の頭文字をとって「CIGS」とも呼ばれているもので、それぞれの原料を融合させた化合物である半導体をソーラーパネルに用いたものでした。この化合物のCIGSを発電層に用いることの最大のメリットは、「ソーラーパネル面の一部が影に覆われるようなことがあっても、大幅な電圧低下を生じないこと」にあります。従来のソーラーパネルでは、住宅街において日照時間が不安定であったり、屋根の向きが南に向いていなかったり、あるいは隣家の建物や屋根に日光が遮られるなどすると、日陰で必要な発電量が得られずソーラーパネルの設置を諦めざるを得ませんでした。それが足かせとなって、ソーラーパネルの普及が足踏み状態に入っているとの指摘も多くありました。

 

日陰という弱点を克服できる「全並列設置」

 

つまりホンダノルディックは、新しい技術の新世代型ソーラーパネルを市場に投入することで、市場に風穴をあけ、新たな普及期の先陣を切ろうとの思惑があったのではないかと推測できます。これは日本の今後にとっても非常に意義のあることで、極論すれば日照時間が年間を通して極端に短い寒冷地などでも、ソーラーパネル設置の道を切り開くものです。日陰や曇天に左右されることなく、安定した発電を実現することは、ソーラーパネル業界全体にとっての悲願でもあると言ったらおおげさでしょうか。さらに技術的・施工的な面での特徴を付け加えれば、「全並列設置」が可能のため、立地環境に左右されにくい有効な配置が可能であるという点です。

 

設置方法には並列設置と直列設置があり、一般的には直列設置が多く用いられます。しかし直列設置には多くのメリットがある一方で「日陰に弱い」という弱点があります。並列設置はその弱点をカバーし、一時的な日陰が生じても発電が継続されることで、発電効率を高めることができます。このように革新的な技術を投入してソーラーパネルの新世代化をめざしてきたホンダノルディックでしたが、現在、志なかばでの撤退となりました。既設ユーザーの同社製品については、親会社の本田技研工業が引き継ぎメンテナンス等を行っています。経営環境の好転とともに、事業再開の日がくることを願っています。